障害者を理解して親切に接するとは、簡単に言えるものの行うのは難しい。なぜなら、その人たちのためになるには、理解や親切より専門的な知識をもとに不自由さを知る必要があるからだ。

有川浩『レインツリー』は、25歳のサラリーマン向坂伸行と聴覚障害者ひとみの恋の話。
聴覚障害というハンディキャップをメンタル部を中心に書かれ、2人の中で生まれる健常者と難聴者のギャップと葛藤が細かく表現されていました。

2人の仲良くなるきっかけがブログを介したメールからと近代的な感じを受けるかもしれませんが、お互いの感性を文字から読みとり、相手に惹かれていく様が強調されていてノスタルジーさを感じました。

私はTwitterの文字数制限、LINEのチャット感覚の手軽さから短文の送信が多くなっており、人々が文章を作ることに向き合う機会が減っている気がします。
メールという制限のない中で互いの気持ちを限りなくぶつけあい、その文章の裏に隠れている人間性を読み取ろうとする2人の姿は、過去の「文通」そのものだと思いました。

raintree

聴覚障害があることから、実際に会ったときは2人の関係はメールのようには行きません。20代半ばの成熟しきっていないコンプレックスのぶつけ合いが多く、ひとみが後ろから来た心無い人にわざとぶつかられたときに伸行が怒ったシーンでは、2人の不器用な心が若いころの自分を見ているようで切なくなりました。

伸行の使う関西弁が標準語で書かれるよりも人間味を感じれるような気がして、恋愛物が得意じゃない私でもすっかり感情移入してしまいました。
彼の難聴者を理解しようとする姿はホントにかっこいい。

コミュ症という言葉よく聞くようになりましたが、2人のように遠慮なしで思いっきりケンカをしてお互いを分かり合うことが足りてないのかもしれませんね。
人間関係が軽薄になっている今だからこそ、相手のめんどくさいところを理解する心の広さと、言葉の裏側を読み取るに気を付けたいと思わせられる作品でした。恋愛小説ですが、男性にオススメしたい一冊です。